「海外のIIoT最前線」では、海外のメーカーの各CEOにインタビューし、自社の製品情報に加え、世界の市場動向や導入事例などを紹介する。第1回目は、MVTec社のウォルフガング・エクスタイン氏にお話しを伺った。

 

  • 日本企業(リンクス)と総代理店契約を締結し、2017年で20年ということですが、契約に至った経緯をお聞かせください。

エクスタイン氏     当社は1996年に設立しましたが、その年の年末にカリフォルニアで行われた展示会に出展しました。その時、リンクスのコンサルタントが来て、面白い製品があると興味を持っていただき、年明けすぐに当社に訪問されました。そして、1997年6月に代理店契約を結びました。

 

  • MVTec社としては、日本での事業展開を考えていたのでしょうか。

エクスタイン氏     マシンビジョンの世界は、その他の市場と比べて規模がそれほど大きくありません。そのため、ヨーロッパだけでビジネスを行っていても限界がありますので、日本には興味がありました。

 

  • 2017年におけるMVTecのグローバルな販売実績はどうでしょうか。

エクスタイン氏     営業実績は公開していません。社員数は135名です。販売代理店は世界で30社程度ありますが、1社で複数の国の企業に販売している代理店もあるので、販売している国は、おそらく全世界で50~60ヵ国くらいだと思います。

 

  • シェアは世界第2位と聞いたのですが。

エクスタイン氏     産業用の画像ソフトウェアとして、売上ベースで世界2位と言っています。もしかしたら1位なのかもしれませんが、保守的に考えて世界2位としています。

 

  • 日本での売り上げは世界の中でどのくらいですか。

エクスタイン氏     上位5位以内、アジアでは1位です。

 

  • HALCONの特徴、他社にない強みはどういうところですか。

エクスタイン氏     まずは機能がとても多機能ということです。ライブラリの中には半導体だけでしか使えないものもあるのですが、HALCONはいろいろな分野で幅広く使うことができますので、多くの市場で使われているという実績があるのが強みです。2つ目は、将来性です。我々は株式を公開していないプライベートカンパニーです。株式を公開していると、どうしても目先の売上を考えてしまいますが、私たちはそうではないので、長い目で将来への投資を考えることができます。例えば、今、画像処理は2次元から3次元に移行していますが、我々は10年前から3次元に取り組んでいます。そのため、現在、最も豊富な機能を持っています。さらに、研究分野の世界とも非常に密接に関わっており、どこかで新しい技術が出たら必ずチェックし、最先端の技術を確認しています。最近では、ディープラーニングに関する最前線の研究に多くの投資をしています。今年の年末にはディープラーニングを使って産業用画像処理が実現できる新製品を発表する予定です。

 

  • 貴社の製品であるMERLICもディープラーニング技術を使っているはずですが、それは違うのですか?

エクスタイン氏     MERLICはOCL機能が強化されているのですが、HALCONのバージョンでは、例えば欠陥の検査などができるようになり、MERLICよりもっと幅広いところでディープラーニングを適用できる新しいソフトウェアになります。

 

  • 発売はいつ頃を予定していますか。

エクスタイン氏     2017年末で、名称はHALCON17.12になります。バージョンアップが多いので、発売年数、月の名称をつけるようにしました。

 

  • 貴社は研究分野とのコネクションがあるそうですが、どういったところとのコネクションでしょうか。

エクスタイン氏     当社のCTOが大学教授として教えています。また、大学との共同プロジェクトがあったり、博士号を取っている社員もたくさんいますので、いろいろなところから最先端の技術を習得できる環境があります。CTOはミュンヘン工科大学の教授ですが、もう1人は、日本でいう産総研のようなところで教えています。そこは、画像処理の最先端の国家研究所であり、MP3をつくった研究所です。

 

  • ワールドワイドで見て、日本市場をどのように捉えていますか。

エクスタイン氏     画像処理の世界では、10年前は研究、製造、開発はすべて日本で行われていました。それが7、8年前、まずは製造がアジアに出て、その後、開発も日本から離れました。そのため、アジア全域で技術力が上がっています。ただ、研究に関しては、最先端の研究が日本で行われています。こうした様々な変化がありましたが、日本はうまく乗り越えているのではないでしょうか。また、日本は、今までやってきた延長ではなく、全く新しいことを始めようとしています。例えば、自動的に作物を育てる農業など、これまで自動化してこなかった分野に自動化技術を適用して新たな産業をつくろうとしているのが特徴だと思います。そうした変化に対して、我々はサポートしています。お客様からどうすれば新しい技術を適用できるかの相談を受けますが、それが他の国とは違うところです。

 

  • 他の市場についてはどうでしょうか。

エクスタイン氏     日本と比較すれば、ヨーロッパはゆっくりと変化し続けています。それは、ヨーロッパは大陸なので、常に戦いの中におり、周りを見ています。日本は鎖国だったので、長らく変わっていませんでしたが、先ほどお話ししたような変化が一気に起こりました。そこはヨーロッパとの違いだと思います。

 

  • 日本のユーザーからの声が、貴社の開発や研究に反映されることはありますか。

エクスタイン氏     日本のユーザーの要求がHALCONに生かされることは多くあります。それは、ひとつは売上が高いので優先順位も高くなっています。さらに、リンクスが高い技術力を持っているため、要求がとても明確になって伝わってくることも大きいです。日本の要求は島氏がすべてまとめていますが、コミュニケーションがとても取りやすいです。また、リンクスからMVTecへの要求だけではなく、我々(ヨーロッパ)から日本へ技術を伝えることもしています。例えば、オランダは食料自給率がとても高いのですが、それは食料、農業の自動化が進んでいるからです。そこで使われている技術の情報を日本に伝えています。日本とドイツの技術を相互に交換しており、そういった技術をLINX DAYSで発表して、最終的にそれが製品になることもあります。

 

  • MERLICの売れ行きはどうですか。

エクスタイン氏     イギリスで成功事例が出ています。速度は少し遅いですが、順調に成長しています。

 

  • 今後、IIoTに向けて動きは加速していくと思いますが、貴社としての開発戦略はどのようなことを考えていますか。

エクスタイン氏     工場の生産効率を上げるにはフィードバック情報が必要となり、そこには画像処理がとても重要になります。また、コミュニケーションをどのようにつなげるかも重要です。今後、OPC UAになるかどうかはまだわかりませんが、基本的にはPLCとマシンビジョンがつながりやすくなり、最終的には上位にあるERPまでつなげる仕組みをつくっていかなければならないと思っています。いろいろな情報を渡し合うのがインダストリー4.0の実現になります。

 

  • そのためには、より画像処理の技術を高めていくということでしょうか。

エクスタイン氏     そうです。通信と画像処理技術の両方を高めていく必要があります。

 

  • 今後、日本市場をどのように強化していきたいですか。また、ワールドワイドではどのくらいの売り上げ増を目指していますか。

エクスタイン氏     日本はワールドワイドで先に進んでいることもあり、既存の装置メーカーでもとてもユニークです。そういったメーカーに対してしっかりしたサポート、サービスをすることでも成長が見込めます。そして、エンベデッドです。組み込み技術がとても成長しており、今後も裾野がかなり広がっていくはずです。例えば、スマホなどにもどんどん画像が入っていきますので、デバイスが安くなることで画像処理の世界はさらに広がっていきます。そのため、そういった新たな分野に対する製品を出していかなければなりません。すでに、スマホなどのデバイスでHALCONは動きますが、そのままでは演算機能が弱く、特殊な行動が必要になります。小さくなっていることを加味した上でのコーディングもやっていかなければならないので、これまでのもので良いということではありません。

 

 

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