2018年10月17日から2ヵ月間にわたり、東京都北区のJR赤羽駅で「無人店舗」の実証実験が行われ、複数のメディアで取り上げられ話題となった。

経済産業紙やオンラインメディアによると、店舗の広さは通常のコンビニの1/10程度(約21万平方メートル)、扱う商品は飲料や菓子など約140種類。利用者は、まず入り口で交通系ICカードをかざして入場する。店内には、カメラが約100台設置されており、天井から利用者の行動を撮影し、陳列棚に設置しているカメラは、商品の動きを追う。利用者が商品を手に取ると、画像から商品を認識、最終的に退場ゲートに進むと、購入した商品と合計金額が画面に表示され、それを確認した上でICカードをかざして決済を行い、退場ゲートが開くという仕組みである。また、商品を事前に個別学習させることで認識させるAI技術を用いている。

また、2017年にもJR大宮駅で同様に実験を行っているが、その時は店舗に入れる利用者は1人しか入店できず、一度取った商品を棚に戻すと認識できなかった。しかし、今回は、画像認識の精度などを高め、3人まで入店できるようになり、2つの商品を同時に取ったり、棚に戻したり、棚の奥から取っても認識できるようシステムになったという。

無人店舗システムは海外から国内へ

2018年6月のIIoT特集において、米シアトルで1号店がオープンした「Amazon GO」を紹介した。Amazon GOは“レジに人がいないコンビニ”であり、店内に設置されたカメラを利用し、ディープラーニング・アルゴリズムにより人の動きをトラッキングする。そして、何を手に取ったか、一度手に取った商品を棚に戻す動作などを正確に捉え、来店客の動きを把握するものである。

中国でも、2017年頃から無人コンビニの出店が始まっており、以来、現在に至るまで出店数がますます増えている。入店、商品の購入、決済、退店に至るまでのシステムが企業によって異なるが、無人店舗の実現には、エンベデッド・ビジョンが不可欠となっている。

*「エンベデッド・ビジョン」については、下記の記事を参照

前述の赤羽駅で実験を行ったIT企業の社長は、産業経済紙で「Amazon GOを視察し、技術の詳細はわからなかったが、我々の方が簡便なシステムだという手応えを感じた。特殊なセンサーなどは使わず、カメラを後付けするだけなので、既存店にも組み合わせやすい」と述べている。また、共同で実験に参加したJR東日本でも、このような無人店舗の展開を目指したいと考えており、これまでは海外で展開されていた無人店舗の動きが、国内でも徐々に広がり始めている。

無人化・省人化に不可欠なエンベデッド・ビジョン

産業経済紙では、赤羽駅での実証実験以外でも、エンベデッド・ビジョンによる無人店舗の取り組みを紹介している。

2018年11月、西日本にあるテーマパークでは、無人の土産物店が登場、入店時に顔認証を行い、セルフレジで現金決済を行う。同店舗のシステムを開発した企業は、製造工場の品質検査向けに開発してきた画像処理技術を小売り向けに応用。1秒間に最大20人の顔を識別できる技術で、客が同時に来店しても対応が可能となった。また、店内では赤外線カメラと距離を測るカメラにより、客が棚のどの位置から商品を取ったかを把握し、AIを活用して画像情報の中で客が手に持った一定の範囲だけを商品として認識しているという。

セブン-イレブン・ジャパンは、2018年12月17日に、入店や決済に顔認証システムを活用し、手ぶらで買い物できるコンビニの運営をNECのビル内で始めた。オンラインメディアによると、事前に登録したNEC社員の顔データと入り口のカメラで捉えた顔を照合。本人確認が完了すると、自動ドアが開いて入店でき、店内ではコミュニケーションロボットが来店者におすすめ商品を提案する他、カメラで捉えた来店者の顔から推測した年代や性別に合わせ、おすすめ商品の広告をディスプレイに表示するという。

同社では、現在、無人店舗は考えておらず、今回の店舗も、あくまで常駐する店舗スタッフの業務負担を減らし、顧客との接点を増やすためのものだとしている。ただし、今後は実験店舗を通じ、オフィスや病院、工場など、利用者が限られる場所への出店を検討しているという。

ドローンをはじめ、自動運転車やお掃除ロボットなど、エンベデッド・ビジョンを活用した製品は、私たちの生活に少しずつ、着実に浸透している。今後は、エンベデッド・ビジョンを活用した“店舗”も増えていくことになるかもしれない。