世界最大規模の産業専門展示会と呼ばれている「国際産業技術見本市 ハノーバーメッセ」が、4月1日から5日にわたり、独ハノーバーで開催された。

IT系ウェブメディアによると、「ハノーバーメッセ」がIIoT(産業用IoT)の分野でトレンドを作る重要な展示会と見られるようになったのは、2011年にドイツが推進するモノづくりの革新プロジェクト「インダストリー4.0」が発表されてからだという。 (MONOist)

その後は、ハノーバーメッセの会場がインダストリー4.0の進捗確認の場と位置づけられており、ドイツのメルケル首相は、毎年、会場を訪れることが恒例となっている。開会式でメルケル首相は、「欧州連合(EU)は次世代の産業テクノロジーにおける競争力を高める必要があり、欧州人は共に行動し、共通の立場を見つける必要がある。また、欧州委員会は年内にEUの産業的能力を促進するための政策を提案する予定だ」と説明。人工知能(AI)やバッテリー技術の開発で、パートナー国のスウェーデンと協力すると述べたと紹介している。

また、今年のハノーバーメッセは、「産業システムの統合化(インテグレイテッド・インダストリー)」が主要のテーマであり、オートメーションやロボティクス、ソフトウェア、IT、真空技術、動力伝達・流体技術から、総合エネルギーシステムなど、広範にわたる産業技術が展示された。世界約75カ国から6,500社程度、日本からは82の企業・団体が出展し、場内でのイベントは1,400を超えるなど、盛況のうちに幕を閉じた。

日本企業・団体の動向

日本からの出展数は、今回は82、前回が79であり、それほど増えていないように見える。しかし、IT系ウェブメディアによると、2015年以前の状況と比べると、出展数が倍増しており、さらに、出展面積については過去最大となっている。そのため、日本の中でのハノーバーメッセの位置付けが高まっているだけではなく、ハノーバーメッセにおける日本企業の発信力も高まってきているという。

インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)は、製造データの相互流通を可能にするフレームワーク「コネクテッド・インダストリーズ・オープン・フレームワーク(CIOF)」について、DMG森精機、東芝デジタルソリューションズ、ファナックと富士通、三菱電機とNECのユースケースを発表した。CIOFは、日本政府が提唱する「Society 5.0」や「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」を実現するために必要となる「製造プラットフォームオープン連携事業」として、産業データ共有促進事業費補助金を経済産業省から受けて、進められている。IVI理事長の西岡靖之氏は、「Forum Industrie 4.0」の中で、「製造データを活用するためにはプラットフォーム間の連携が必要になる。CIOFの仕組みは限定環境では実証できた。今後は日本だけではなく海外での採用を促したい」と成果を訴えていた。(MONOist)

三菱電機では、国内では手掛けていないパラレルリンク型のロボットを展示。オランダ製のロボットを使い、サーボモーターだけ三菱電機製に置き換えて製作しており、同社製のモータードライバーで制御できるという。 (日経XTECH)

川崎重工業は、ロボット技術を中心としたデモを展示した。特に注目を集めたのは、同社の大型自動二輪車を軽々と持ち上げる産業用ロボットの姿であったという。欧州では“KAWASAKI”といえばモーターサイクルのブランドがあるが、産業用ロボットを手掛けていることを知らない人が多い。そのため、バイクと共に産業用ロボットをアポールする意図で展示したことを紹介していた。 (日経XTECH)

ヤマハ発動機は、2018年に続き2度目の出展であったが、ブースの面積を2倍に拡大した。その中で、複数の製品を組み合わせたソリューションを展示し、“ヤマハのロボット”をアピールした。

デンソーウェーブは、同社の協業ロボット「COBOTTA」を中心に展示。4台のCOBOTTAを連携させ、3色ボールペンを組み立てる自動化工場のデモや、多数の試験管に試薬を入れるデモ、画像認識で部品を仕分けるデモなどを行い、来場者の注目を集めていたという。(日経XTECH)

注目の海外企業も紹介

日本企業のみならず、海外企業の技術や動向も多くのIT系ウェブメディアで紹介された。

ドイツのベッコフは、“浮遊して運ぶ”リニア搬送システムを紹介。同システムのために開発した高速通信技術「EtherCAT G」や、機械学習機能を採用したソフトウェアPLC技術などの関連技術をアピールした。同システムは、電磁力により浮遊させた可動部を、平面タイルの上に浮かべて自由に動かすことが可能となる。高度な電気制御技術により、精密な位置決めを可能とし、複数の可動部をぶつからないように滑らかに動かすことができる。非接触であるため、摩耗や汚染物質の排出なども抑えられ、食品や飲料、医療機器など清浄な環境が求められる用途にも適用可能という。 (MONOist)

スロバキアのフォトネオでは、市販ロボットアームを用いたティーチング(教示)レスのばら積みピッキングのデモンストレーションを披露した。画像データによる物体認識アルゴリズムと動作計画アルゴリズムの組み合わせで教示レスを実現している。また、同製品は、ファナック、オムロン、安川電機、川崎重工業、三菱電機の製品に対応しており、国内のユーザーでも使い慣れたメーカーの製品を選べることが可能。日本ではリンクスと代理店契約を締結しており、川崎重工業が同社のロボットアームを拡販するためのオプションとしてフォトネオ社のソリューションを採用するなど、日本でも普及の兆しがあることを紹介していた。 (日経XTECH)

フォトネオ社の Bin Picking Studio

5Gによるスマート工場

今回のイベントでは、次世代通信規格「5G」も注目を集めていた。経済紙によると、産業用5Gは、2021年頃から工場などでの利用が本格化すると言われているが、ドイツのシーメンスでは、5Gの利点を生かしながら、生産データを工場の外には出さず、拠点内で完結する「プライベート5G」の開発に着手。即時のデータ共有やケーブルのない工場を可能にすることで、製造業の生産性向上の新たな取り組みを進めており、社内に複数のテストセンターを設け、2022年をめどに装置やシステムを投入するという。

ドイツの工学機器大手のツァイスは、5Gに対応した生産ラインの全量検査装置を発表。欧州と中国など、離れた工場で検査装置同士が5Gで通信し、同じ部品の品質をリアルタイムで比較し、品質向上につなげるという。

また、経済産業紙では、中国のファーウェイが、本イベントで初めて第5世代(5G)移動通信システムを活用した工業ソリューションを展示し、スマート製造分野における中国企業の進展が注目を集めていることを紹介していた。

中国企業の海外展開は、韓国や日本の他、欧州メーカーからも注目を集めている。ドイツSAP社 グローバル執行副総裁 マーク・ギブス氏は、「中国からの参加者は以前、欧州企業の新技術を見に来るというものだった。だが今では、欧州からの参加者が見に行くような最新技術を展示する中国企業が少なくない」と述べており、ハノーバーメッセにおける中国企業の技術力の高まりが注目されている。

今後も、世界のIIoTの動向に注目していきたい。