近年、自動運転車の開発、生産などにより、各自動車メーカーの生産工場でもIoT化が進んでいる。特に、日本の基幹産業である自動車産業の売上高は、全製造業の約2割を占めており(2015年)、就業人口に占める割合は8.3%に及ぶという。日系自動車メーカーの世界シェアは28.9%(2016年)と国別でトップであり、40年間にわたり、この座をキープしている。また、世界の自動車の販売台数は、引き続き堅実な伸びが見込まれ、今後も拡大が続くことが予想される。このように、自動車産業は順調に成長する見込みだが、その中で、国内の生産拠点では、労働力の不足という大きな問題を抱え、各社がスマートファクトリー化を目指している。今回は、自動車各社が抱える課題とスマートファクトリーの実態について、紹介する。

人手不足解消に向けスマートファクトリー化を進める三菱自動車

三菱自動車では、国内の生産拠点における課題の1つとして労働力不足があるという。同社の自動車生産の全要素技術を備えている水島製作所(岡山県倉敷市)では、その課題解決のひとつとして、AI、IoTを活用したスマートファクトリー化を進めている。その狙いに、情報の「見える化」、「つながる化」、「リアルタイム化」の3つを掲げており、スピーディーで的確なアクションによる自律工場の実現を目指している。

IT系ウェブサイトによると、工場の製造システムは、情報の収集と活用をベースに、3つの階層に分かれているという。最下層がデータの収集、フィードバック、中階層は集めたデータを処理する領域、最上層が分析したデータを見ながら統括する領域となる。これまでは、熟練者が全てのデータをコントロールし、顧客の要望に合わせた生産形態をとっていたため、最上層の運営はまだ時間がかかる領域である。しかし、部分的な分析など、できるところから積極的に進めており、“止まらない生産ライン”の実現に向け、生産稼働の見える化、要因の分析、リアルタイムフィードバックを組み合わせて、止まる前に異常に気付き、止まってもすぐに復旧できる工場の実現を目指しているという。また、ラインの見える化については、生産機械やロボットなど各設備から生産情報を収集し、管理センターで稼働状況をリアルタイムに把握することを目指している。 (MONOist)

IIoTにより世界各地の生産拠点で効率化を目指すホンダ

ホンダでは、約50年の歴史がある鈴鹿工場や狭山工場での経験を生かし、2013年、埼玉県に寄居工場を立ち上げた。同工場の生産ラインは、人間が得意な領域とロボットが得意な領域を見極めて最適化されており、重量物の取り付けのようにロボットが得意とする領域を広げ、ロボット同士の連携を高めている。

また、同工場は、稼働を開始して以来、常にモノづくりが進化する工場として成長を続けており、特に取り組んでいることは、世界の生産の安定化、品質の高位安定化を行うための高度情報化による生産革新、トレーサビリティーなどとともに、グローバルでの生産体質向上に向けた「生産総エネルギー最小化」であるという。

自動車の製造において、新モデルの導入時が製造技術の変換点であり、その際に世界の生産拠点をいかにスムーズにつなぎ、世界各地での製造を円滑に立ち上げ、安定化生産に導けるかがカギを握る。ホンダ寄居工場では、これまでエキスパートが世界各地の拠点を飛び回り、それぞれの製造拠点で生産の安定化を図る作業を進めてきたが、現在はこうした負荷を削減するため、IIoTを活用して見える化、軽量化を進め、世界各地の拠点での生産をより負荷がかからず行うことを目指しているという。

例えば、同工場では、エキスパートの知見とデータ分析を連携し、塗装作業によるごみの付着などの塗装不具合に対する予知予防システムを構築した。また、精度不良による設備トラブルや接合品質トラブル、チョコ停などが発生した時のデータを集め、エキスパートの知見を基に品質と因果関係を分析するエンジンを構築した。こうしたデータに基づく分析をシステム化することで、不具合が発生した時の要因を、従来よりも短期間で見つけられるようになったという。寄居工場では、こうしたエキスパートの知見とデジタル技術の高次元での融合により、「究極の生産体質と商品進化の両立」を加速することを目指している。 (MONOist)

トヨタ生産方式のさらなる進化

「リーン生産方式」、「ジャスト・イン・タイム方式」と呼ばれるトヨタ自動車の生産方式は、最も短い時間で効率的にクルマを生産するために研究されたシステムとして世界的に有名である。そして、工場内外での情報を迅速に収集し、工場の稼働を早めるため、2016年に同工場で利用する産業用ネットワークにイーサキャット採用することが発表され話題になった。

同社による“必要なモノを必要な時に、必要なだけ用意する”といった理念は、現地現物でムダを見極めることが重要となる。しかし、かつてはシンプルな生産状況であったため、この方式が効率化に有利に働いていたが、近年ではニーズの多様化によって生産状況が複雑化し、見極めが困難になっているという。

そのため、この見極め部分にIoTを活用し、稼働率の向上を狙ったIIoT化を進めている。そのひとつとして、同社の生産方式の要素のひとつになっている「アンドン」システムのWeb化がある。アンドンとは、必要な情報を、必要な人に、タイミングよく知らせるための管理ツールであり、各生産ラインに設置されたランプで、何か異常が発生した際に他社にそのことを知らせ、ラインにおける問題を顕在化(見える化)することを目的としている。しかし、アンドンによって異常発生をタイミングよく知らせたとしても、現状では、それを修繕するためには、異常が発生した場所に担当者が移動し、装置を見ながら故障の原因を究明、その後、修理といった作業工程がある。その工程をさらに削減するため、必要な情報のデータを収集するため、オーストリアのCOPA-DATA社が開発したSCADAソフトウェア「zenon」を選定した。そして、データ基盤を整備し、稼働状況の詳細を分析しているという。

SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition):産業用の制御システムの一種であり、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行うソフトウェア

海外メーカーのIIoT化

フランス・パリに本拠を置くキャップジェミニは、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、スウェーデン、英国、米国の8か国に拠点を置き、年間収益10億ドル以上の自動車メーカーとサプライヤーを対象に、自動車業界のスマートファクトリー導入に関する調査を実施した。その調査結果によると、自動車メーカーのほぼ半数の46%が、スマートファクトリーに2億5000万ドル以上を投資、2022年末までに、自社工場の24%がスマートファクトリーとなると予想している。また、スマートファクトリー導入の効果に関しては、2023年までに年間1600億ドルの生産性向上が期待できると予測している。さらに、世界のトップ10の自動車メーカーは、スマートファクトリーを最大限に導入してから5年以内に、年間46億ドルまたは50%の営業利益の増加が期待できると見ており、自動車産業におけるスマートファクトリー化は、今後もさらに加速していくことが考えられる。

ダイムラーでは、昨年11月にメルセデスベンツの次世代工場「ファクトリー56」の詳細を発表。自動車専門のウェブメディアによると、ファクトリー56は、デジタル、フレキシブル、グリーンを重視し、工場で働く従業員に焦点を当てた最新工場である、「インダストリー4.0」に沿う形でデジタル化されている。さらに、グローバル生産ネットワークの他の工場とも接続され、2020年の稼働を目指すという。メルセデスベンツ乗用車の上級車やEVなどの生産を開始する予定であり、工場には5Gモバイル通信を導入する。強力なWi-Fiシステムにより、機械とシステムを相互にネットワーク化。工場は完全にペーパーレスとなり、従業員はモニターとPDAを使って作業を行う。さらに、新型車の量産立ち上げの前には、VRによって生産プロセスを視覚化し、従業員の研修に役立てる。なお、自動車生産における5Gネットワークの導入は世界初としている。 (Response.)

日本においても、総務省がローカル5Gを推進しており、工場への5G導入が検討されるようになっている。今後も、さらなる技術革新により、IIoTが加速していくことが考えられる。