製造現場のさらなる生産性の効率化や省人化を実現するため、近年、多くの企業はIoTを活用して工場内のあらゆる機械や設備のデータを収集したり、AIを活用してこれまで人に頼っていた作業を自動化するなど、様々な取り組みを行っている。8月2日、東京・大手町で開催された「Industrial IoT Meeting」では、「本物は、既にここで動いている。」をテーマに、実際の現場ですでに活用されている事例を交え、現時点で産業用IoT(IIoT)が出来ることは何かについて発表された。「IIoT特集」では、同イベントに登壇した日本マイクロソフト、トヨタ自動車、オムロンについてレポートする。第2回目はオムロンを紹介する。

オムロンが考える市場動向

オムロンでは、エンドユーザーの趣味や趣向の変化によって、市場も変化すると考えている。これまで、エンドユーザーは価格を重視し、品質や処理能力については必要最低限で良いという姿勢であった。しかし最近では、値段はそこそこであっても、より安全で高品質、扱えるデータも非常に大きいものを求めるように変化してきている。そして、変化したニーズに合った製品を作るために、製造に利用される設備や製造現場のあり方にも変化が求められるようになっている。従来はひとつの機械でひとつのモノを製造していたが、モノが複雑になると、加工するための工程も複数になり、異なる機械を複数つなげてライン化するようになる。複数の機械を使えば当然コストもかかるようになり、さらに機械同士を効率よくつなげることができなければ、工場の生産性も落ちてしまう 。

オムロンのインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 コントローラ事業部 コントローラPMG 経営基幹職の夏井敏樹氏は、「IoT化とは、工場内の垂直(縦)方向のデータを最適化させることで効率化を図ると言われることがあるが、実際には機械間の水平(横)方向のデータを最適化することも重要となる。また、近年の製造現場ではオペレーターの数が減少しており、習熟者以外でも装置を使いこなせなければならない状況になっている。そういった時に直感的な操作でスキルが足らない人でも使えるようなマシンが必要となっており、“Easy to Use(簡単)”な作り込みが求められている」と現状について説明する。 製造業においては、これまでPLC(Programmable Logic Controller)が主流となっていたが、コントローラ同士がつながることが増えたことによって、 従来のPLCに加え、標準化要素(プログラミング言語およびネットワーク・プロトコル等)を加味した高機能PLCといえるPAC(Programable Automation Controller)が登場した。さらに、現場データ活用(IoT)のトレンドからデータハンドリングに適した産業用PC(以下:IPC)がFA(Factory Automation)の現場に入るようになった。

IPCは産業業務用途に特化した性能を持つPCであり、一般向けPCとは異なる特徴として、① 電源環境が不安定な状況においても安定した動作を作り出すことができる「信頼性」、② 産業用途の厳しい環境にも耐えうる耐衝撃性、耐振動性を持ち、またノイズや静電気、粉じんへにも強い「耐環境性」、③ 最低でも5年、長い場合は20年以上も使用することが可能な「長期供給」の3つが挙げられる。 近年、自動車、デジタル、三品(食料品、薬品、化粧品)といった業界では、制御への要求に変化が生まれている。例えばデジタルの世界では、スマートフォンに代表されるように、通信の高速化、大容量化が進み、端末の中で使われている半導体の小型化、大容量化が求められている。それらに対応するため、データを活用し、プロセスを駆使していく中でデータハンドリングに優れたIPCが多用されている。

オムロンでは、こうした市場の変化に合わせ、“いつでも、どこからでも指先ひとつで制御が実現できる”ことを目指し新たなソリューションづくりに取り組んでいる。「現場の機械や設備のデータを収集し、現場のデータをいかに見える化するか、そしてレポーティングするかが重要となる。そこで近年、注目されているのがSCADAである(夏井氏)」という。オムロンでは、制御と情報処理の融合を目指し、同社が提供するIPCに業界で定評のある他社の各種アプリケーションソフトウエアを組み合わせて、新しいソリューションを作り出す「Best Match!」を推進している。そのひとつに、工場全体の統合管理が可能となるSCADAソフトウェアとの組み合わせがある。

日本と欧州における意識の違い

しかし、SCADAへの意識について夏井氏は、「販売状況からみると、日本と欧州ではまだ差がある」と指摘する。オムロンでは、データハンドリングに適した製品(Type1)と、データハンドリングよりも高性能の制御が可能なより制御用途に適した製品(Type2)があるが、Type1の欧州と国内の販売比率が7:2(その他1)だという。「国内においては、現場にまだまだ以前から使用されているコントローラが多く使われている状況にある。欧州ではすでに工場でのデータ活用が一般化しており、データハンドリングに適したType1が主流となっている。つまりこれは、SCADAのようなソフトウェアで工場を管理するシステムの活用が進んでいることを意味している。一方、日本ではPCベースでの制御が少なく、装置そのものの見える化を利用するレベルで留まっており、工場全体を見られるSCADAのようなシステムの導入が進んでいない。欧州市場においては、工場全体のデジタル化が一般化しているが、日本はそれを追いかけており、まだ道半ばといった状態である」と説明する 。

オムロンの今後の展開

オムロンでは、IPCを「制御と情報処理の融合」を実現するプラットフォームと位置づけ、IPCの製品ポートリオの拡大はもちろん、PLCで培ったグローバルビジネスの経験を活かし、世界各国の安全規格(欧州系のCEマーキング、北米系のULマーキング、韓国のKCマーキング、オセアニアのRCM、中国のCCC、ロシアのEAC)への対応および特定有害物質の使用制限にかかる指令(RoHS)への対応も行っている。また、前記した「Best Match」コンセプトによりIPC単体ではなく、「IPCを使ったソリューション」という形での提供を拡大していく考えである。(夏井氏)