10月末、上場企業の中間決算の発表がピークを迎えた。SMBC日興証券のまとめによると、10月30日までに発表を終えた製造業の経常利益は、昨年の同時期と比べて19.1%減少している。業種別では、建設機械などの「機械」が29.9%、電機メーカーなどの「電気機器」が19.6%、自動車部品メーカーなどの「輸送用機器」が17%減益となっている。減益の大きな理由は、米中貿易摩擦の長期化により世界経済が減速し、生産や輸出が低迷していることであり、今年度の経常利益の見通しを下方修正した製造業も118社中41社になるという。

工作機械業界においても米中貿易摩擦は大きな影響を与えている。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた2019年4-9月の工作機械受注実績(確報値)では、前年同期比34.0%減の6048億5700万円になった。また、9月単月の受注実績は、前年同月比での減少が12ヵ月連続減となる前年同月比35.5%減の989億7300万円であり、9月としては9年ぶりに1,000億円を割り込んだ。さらに、2019年の工作機械の受注見通しについて、年初に予想した1兆6,000億円から1兆2,500億円になると、3,500億円の下方修正を行った。

業界全体の受注減は、各企業の利益や売上高にも影響を与えている。工作機械大手のファナックが10月末に発表した2020年3月期の連結業績予想によると、売上高は前期比20.6%減の5,045億円、営業利益は同57.7%減の691億円となる見通しである。これは、同社が7月に公表した予想値から、それぞれ197億円、22億円を引き下げており、営業利益が前期比で半減以下に沈むのは2010年3月期以来、実に10年ぶりとなる。オークマは、2020年3月期の連結純利益が前期比41%減の110億円になる見通しだと発表した。従来は12%減の163億円を予想していたが、企業の投資意欲が後退しており、設備投資の先送りが相次いでいる。

大手企業による新たな取り組み

しかし、経済産業紙によると、工作機械の受注は数年単位で好不調を繰り返すものであり、短期的な受注の上下動に一喜一憂しても仕方ないといった考えが根強い。また日工会では、各国の景気刺激策や半導体関連の投資再開などにより、市場は2020年4-6月には回復が始まるだろうと予想している。このような状況で、工作機械メーカーでは新たな利益を生み出すために様々な取り組みが始まっている。

ファナックでは、主にロボット部品を加工する機械工場において、夜間の操業を無人化した。同工場には工作機械47台、ロボット64台が配置されており、加工対象物の搬送から、工作機械での加工、加工後に倉庫に戻す作業までを自動化した。さらに、加工対象物が変更されることで必要な治具の交換といった段取り替え作業も自動化したという。また、すべての機械や制御装置は同社のIoTプラットフォームである「FIELD system(フィールドシステム)」でつなぎ、稼働状況や加工数などを監視し、機器が止まると現場の担当者にメールが送られる。工具の交換や補充は作業者が日中に対応することで夜間を無人化し、設備の停止率は0.1%以下に抑えたという。その他、三菱電機、ドイツのクーカ社と連携し、工作機械に取り付けるロボットの作業手順の簡素化を進めており、専門知識がない作業員でも簡単に操作ができるようになることを目指している。

ヤマザキマザックでは、9月にスマートファクトリーの深化とソリューション提供の拡大を目指し、ロボットメーカーやソフトウェアメーカーとの連携を強化するコラボレーション「Mazak Solution Partners(マザック ソリューション パートナーズ)」の実施を発表した。同社の工作機械と接続するインターフェースを公開することで、個々のユーザーのニーズを反映したロボットによる自動化の構築や、段取り作業を支援するソフトウェアとのデータ連携が容易になる。

DMG森精機では、インドの顧客獲得を目指し、同国のラクシュミ・マシン・ワークス社と提携し、現地での生産を開始した。両社は1988年から89年にも同様の提携関係にあったため、DMG森精機にとっては30年ぶりのインド生産となるという。産業経済紙によると、日工会の調べでは、2019年1-7月期のインド向け工作機械受注額は、前年同期比14.1%減の234億5900万円ではあるが、アジアでは中国に次ぐ市場規模を持ち、今後は中国を上回る市場規模に成長すると可能性があるとも言われている。同社では、日本から生産機を供給する場合に比べてリードタイムを短縮し、価格も20~30%減にすることで、インドの高付加価値の加工を狙う顧客層を開拓したい考えである。

また、以前の「IIoT特集」で紹介したように、ファナックやDMG森精機では、NTTドコモやKDDIといった大手携帯電話会社と連携し、5G(第5世代移動通信システム)を活用した工場の完全無線通信化や、保守・管理や遠隔操作の応用を探る実証実験を行うことを発表しており、さらなる生産効率の向上を目指した取り組みを進めている。

過去最多の企業・団体が出展した「メカトロテックジャパン」

10月23日から26日、愛知県名古屋市にあるポートメッセなごやでは、国内最大級の工作機械見本市「メカトロテックジャパン2019」が開催された。「メカトロテックジャパン」は1987年から2年に1度開催されている見本市で、今回が17回目となる。そして、今回は過去最多の477社・団体が1941小間を出展、合計9万人以上の来場者が足を運んだ。

オンラインメディアによると、今回の出展で特に目についたのは、出展している各メーカーが人工知能(AI)の活用を本格化させていることであるという。そして、作業者の業務負担の軽減や蓄積されたノウハウの継承、生産ラインの稼働率の向上などに、AIを活用したロボットやシステムの開発、導入が進められており、各企業のデモンストレーションや技術内容について紹介したと報じている。

三菱電機では、同社のAI技術ブランド「Maisart」を利用し、加工時間を予測する機能を標準搭載した形彫放電加工機「SV-P」シリーズを出展した。「Maisart」を活用し、それまでに加工した量と残りの加工量から加工時間を自動算出する機能を標準搭載しており、前後の工程間で発生する段取りの時間ロスを削減することができ、稼働率の向上につながる。すでにおおよその加工時間を予測する機能はあったのだが、AIの活用することで、加工時間予測の誤差が従来に比べて半減できるという。

シチズンマシナリーでは、参考出展として、切削加工をする工作機械のひとつである旋盤への切りくずのかみ込みを即座に検出することができるAI機能を展示した。背面主軸チャック部に設けた振動センサーの加工中の振動波形の乱れをAIで解析することで、かみ込み発生の有無を検出するという。そして、判断結果が「OK(かみ込みなし)」、「CHECK」、「NG(かみ込みあり)」の3段階で出力されることで、作業者は「CHECK」品だけを再検査すれば良くなり、検査工数の削減が期待できるという。また、展示会では、所同社事業所(埼玉県所沢市)で加工中の旋盤の振動データをリアルタイムで遠隔監視してかみ込みを判定するデモンストレーションを披露した。(日経XTECH

米中貿易摩擦解消の見通しが立たない現在において、さらなる景気の悪化、受注量の減少の可能性がないわけではない。しかし、そのような環境の中でも、各企業は利益を生み出すために、新たなテクノロジー、サービスの研究、開発が進められている。