Automatic Guided Vehicle(AGV)とは、床面に敷設されたマーカーやワイヤー、またレーザーの誘導に従って無人走行する搬送用台車のことで、日本では自動搬送装置あるいは無人搬送車などとも呼ばれる。AGVは1980年代初め頃から、製造業の生産現場や倉庫を中心に原材料や部品、完成品等の搬送に幅広く活用されるようになったが、近年の技術の進歩に伴い、AGVが利用される分野が拡大している。テーマパークのアトラクション(乗り物)はその一例で、英国のシムワークス(Simworx)は、2019年11月の国際テーマパークEXPOにおいて、AGVを活用した二つの新たなアトラクション – AGV Dark Rideと、Mini Flying Theatreを発表した。 無人で走行するAGVには、多くのメリットがある。作業員が手で原材料や部品を運ぶよりも、AGVを利用した方が、より安全で効率的である。また、労働力の不足が喫緊の課題となっている製造現場において、AGVの導入は有効である。単に人手不足を解決するだけでなく、AGVにより、作業員が、物を移動させるという単純作業ではなく、より付加価値を生む作業に専念できるという利点もある。2018年のAGV市場規模は、10億ドルと推定されているが、今後製造業だけでなくヘルスケアなど様々な分野での利用増に伴い、2019年から2029年の10年間、年率9%で成長すると予想されている。

AGVナビゲーションシステムの進化

世界初のAGVは、1953年にバレットエレクトロニクス(Barrett Electronics Corporation)のマック・バレットが開発したものと言われる。“Guide-o-Matic”と名付けられたAGVは、架空に設置されたワイヤーに沿ってトラクターが移動する、というもので、倉庫や工場で利用された。AGVという単語が登場したのは1980年代になってからであるが、この時期には、ワイヤーではなく、レーザーや磁気テープによる誘導で走行するAGVが開発された。レーザー誘導AGVが開発されたのは1987年であり、また1989年には、コンピューター制御のAGVが開発されている。

こうした、レーザーや磁気テープ誘導によるAGVは、低コストで導入が容易ということもあり、現在でも人気である。こうしたAGVは、「技術に詳しくない人にとってもシンプルで分かりやすい」、とDaifuku Jervis B. Webbのニック・エレンは言う。こうした伝統的AGVは、比較的単純な繰り返し作業、例えば、同じ大きさの部品を、決まった場所から決まった場所へ運ぶことを繰り返すような作業に向いている。

一方で、製造業の生産現場がより洗練され、また配送センターでの作業がより複雑になるにつれ、AGVに求められる作業内容も複雑化している。より複雑な業務に対応するため、磁気テープではなく、SLAM(simultaneous location and mapping)と呼ばれる自己位置推定と環境地図作成を同時に行うナビゲーションシステムや、対象物にレーザー光を照射し、その反射光を光センサーでとらえて距離を測定するLiDARによるナビゲーションシステムを搭載し、より自由度の高い自動走行を可能としたAGVが誕生している。

中国のHRGは、中国の大手ロボット企業HIT ROBOT GROUPは、レーザーにより自機の位置を把握し、また周辺の二次元地図を作成して自立走行をする、室内での軽量物の搬送に活用できるAGVを開発した。また、フィンランドのナビテック(Navitec Systems)は、LiDARベースのナビゲーションシステム、「Natural Future Navigation」を提供している。これを活用することで、周辺環境マップの作成や搬送経路作成、複数台のAGVを効率的に運用することが可能なフリートコントロール、動的経路変更などを簡単に設定することが可能になる。同システムには、移動経路にある障害物を感知し、避ける機能も搭載されている。こうした新世代のAGVは、周囲の環境が一定でなく、変化するような現場において非常に有効である。

FANUCは、パートナー企業のAGVと自社の協働ロボット(コボット)を組み合わせた製品を開発している。安全柵不要の協働ロボットとAGVを組み合わせることで、ロボットの動作エリアが拡大し、人手中心の製造現場の自動化を推進するソリューションであり、自動で充電するコボットを使うことで、24時間の操業が可能となる。

製造業のスマート化が加速すれば、こうしたAGVの需要は更に高まっていくことが予想される。より強力なセンサーやトラッキング技術、また運搬物や経路を把握する優れたソフトウェアが搭載されたAGVがあれば、遠隔からでも、工場や倉庫内で部品や完成品がどのように運ばれているか、リアルタイムで把握することができる。上述のエレン氏は、IoTとデータ主導のスマート工場の時代において、これは非常に強力なツールでり、「今後、AGVは、工場内のデータシステムとより密接に結びつき、付加価値を高めていくだろう」と述べる。

ラストワンマイルでのAGVの活用

自立走行するAGVは、製造業以外の場所でも活用が始まっている。例えば病院では、食べ物の容器や薬品、病原菌のサンプルなどを搬送するのにAGVが利用されている。また、最近では、ラストワンマイルにおけるデリバリーのためのソリューションとしてAGVが注目されている。

アマゾン(Amazon)は、ラストワンマイルのデリバリー用のロボット「スカウト(Scout)」の実証実験をワシントン州で行っていたが、2019年8月に、南カリフォルニアで同ロボットの本格展開を開始した。スカウトは、Amazonのプライム会員向けの荷物を都市部の配送センターで受け取り、客先まで配送することで、ドライバーによるラストワンマイルの配送作業を代替する。また、リフラクションAI(Reflaction AI)は、低コスト、低重量のデリバリーロボット「REV-1」 を開発した。REV-1は、バイク用レーンと路肩を走行することが可能で、LiDARの代わりにカメラを活用することで大幅な低価格化に成功した(ロボットには、安全性確保のため、レーダーと超音波が利用されている)。

日本においても、オンラインショップや宅配ニーズが急激に増加する一方で、少子高齢化の影響もあり、物流や運送業界では人手不足が続いている。AGVの活用が期待されている分野であるが、現状、日本では道路交通法があり、歩道を含めて公道を自走することが原則禁止されている。AGVの活用及びそのための制度やインフラ整備の検討のため、2019年6月に「官民協議会」を立ち上げ、① 安全性の確とその役割分担の整理、② ユニバーサル性の確保(交通弱者への配慮)、③ マップ等のインフラの整備(協調領域の検討)、④ 事故等の法的責任分界の整理等の課題についての検討を行っている。協議会の発足に合わせ、6月には経産省本館前に5種類の自動走行ロボットが集められ、紹介とデモンストレーションが行われた。