ビンピッキング自動化の必要性

米国では、製造業で働く労働者のほぼ四割が、ケースやビンから部品を取り出し、機械に運ぶ作業に従事している。失業率が過去半世紀で最も低いレベルにある中、こうしたビンピッキング作業を自動化するニーズはかつてない程大きい。米国に限らず、団塊世代の大量定年などの理由で労働力不足が深刻化する国についても、そのニーズは同様である。

それにもかかわらず、製造業における自動ビンピッキングの採用率は未だに低いままである。ピッキング作業は、対象となる部品が整理された状態にあれば、さほど複雑な作業ではない。部品が整然と並べられているならば、それを識別し、掴んで取り出すのは単純な作業であり、2Dビジョンやイメージングなど既存のツールを活用して自動化が可能である。しかし、対象となる部品がランダムに積まれている場合、作業ははるかに複雑なものになる。ランダムにおかれた部品を掴み、機械にセットするのは、人間にとっては単純な作業であるが、ロボットにとっては非常に困難な作業である。ロボットは、ばらばらに置かれた部品の位置を正確に把握し、どのように掴むのが良いかを判断し、他の部品やかごにぶつかることなく作業を行う必要がある。ビンピッキングの自動化の実現を阻むのは、こうした複雑さ、困難さである。

近年、こうした課題を克服するための新たな技術が生まれている。より先進的なビジョンシステムや改善されたセンサーやソフトウェア、また掴む技術などである。マシンビジョンや3Dセンサー、あるいはAI技術の進歩により、ビンピッキングの自動化が今年一気に進むと予想する専門家も出てきている。

最新ビジョンシステムとAI技術の活用

ロボットは、ビジョンシステムを通じて周囲の環境を把握し、部品の位置を確認する。近年、ビジョンシステムは、バラ積みされた部品であっても、また工場の製造現場のように変化し続ける環境化においても部品の位置を把握できるよう進化してきた。ロボット自身および掴む部品の正確な位置を把握するのには、複数のカメラ(ロボットのアームや頭上など)が利用されることが多い。ロボット(アーム)が動くにともないカメラも移動し、またそれにより照度や視界も変化する。こうした状況において正確な位置を把握するのは簡単なことではないが、コンピューターの演算能力の進化により、課題は解決されつつある。

例えば、“iRVision”を搭載したFANUCのピッキングロボットは、部品箱に縞投影を行い、16枚の写真を素早く撮ることで、ロボットが掴むべき部品にたどり着くのに必要な情報を提供する。優れた演算能力のおかげで、アームが部品箱や別の部品にぶつかったりすることもない。また、Adept TechnologyによるSmartVision MXは、8つのカメラを同時に使い、ビンピッキングを行う。

AI技術の活用も、ビンピッキングに大きな変化をもたらしている。これまでのやり方は、ロボットが正しい部品を取り出せるように、多くのルールを教える、というものであった。こうしたルールを作るには、大量の試行錯誤ややり直しが必要であり、多くの時間を必要とする。エラーが発生したら、人間のオペレーターがそれをロボットに教え、必要ならばルールを修正し、また訓練を行う必要がある。これに対し、FANUCが開発したAIベースのツールでは、オペレーターは部品箱にバラバラに詰まれている部品の写真を見て、ロボットに取り出させたい部品の例を画面上でタップするだけで良い。ロボットに、人間と同じような動作をするように教えるのは非常に困難であるが、AI技術を活用することで、幼児におもちゃの片付け方を教えるように、より直感的にロボットを訓練することができる。また、このツールを利用すれば、複数のロボットを同時に訓練することも可能だ。同様に、安川電機は、ディープラーニング(深層学習)を用いてAIピッキング機能を開発した。深層学習により、ピッキングアームに取り付けたカメラの画像から、個々の物体に適したつかみ方を学習する。また、こうしたAIはロボットに依存しないため、他のロボットも移植することができる。

新技術で参入するスタートアップ

技術革新がすすむビンピッキング分野では、スタートアップの参入も盛んであり、多くのスタートアップが、ロボットに依存しないピッキングソリューションを提供している。CapSen RoboticsによるCapSen PICは、バラ積みされた部品を取り出し、事前にセットされたパターンに従って置くことで、何度も繰り返す(人間が行うには大変な)ピッキング作業を自動化する。同じく、Bluewristが開発したFlexiPickは、バラ積みされた部品を取り出し、製造ラインに並べることができる。こうした業界でも特に注目されているのが、スロバキアのスタートアップ、Photoneoである。

Photoneoのシステムはロボットに依存しないため、FANUCや川崎重工業、オムロンなど様々なメーカーのロボットに活用できる。2018年にリリースされたBin Picking Studioは、画像処理やスキャナー、CADマッチングに軌道演算、AIによる位置把握、衝突防止システムなど、バラ積みピッキングするのに必要な要素を全て備えている。3Dビジョンシステムは、バラ積みにされた大量の部品を素早く、そして正確に認識することができる(Photoneoでは、同社が開発したPhoXi 3Dカメラは、世界で最も早く、そして正確な3Dカメラであるとしている)。また、PhoXi 3Dスキャナーは、レーザー縞投影という独自の手法により広い視野・深い被写界深度を実現し、対象全体を一度にスキャンすることができる。小さな箱から大きなコンテナまで、ピッキングの対象物の大きさに応じて、同社は視野の異なる5種類のモデルを提供している。また、ドイツ、シュツットガルトで開催されたVision 2018展示会では、20fpsで3D撮像を行うPhotoneoの新製品 「MotionCam-3D」が高く評価され、優れた新製品に贈られる賞 「Vision Award」 のグランプリを受賞している。

中小企業での導入促進へ

より優れたビジョンシステムやカメラ、センサーに演算能力により、ビンピッキング技術はこの数年で大きな進歩を遂げた。正確性が改善すると共に、コストも下がっており、またソフトウェアもより高速に、そして使いやすいものへの進化している。従来のものに比べると、今のシステムは簡単で導入しやすく、各工場の環境に合わせて柔軟に適用できるものになってきている。製造業におけるビンピッキング作業の多くは中小企業で発生しているが、複雑で高価なシステムを導入する財政的、技術的リソースが無いことが、これまで自動ビンピッキングの導入を阻む要因であった。低価格化、そして導入が容易になったことで、今後、中小企業における自動ビンピッキングが採用されることが期待される。