*本原稿は、2017年8月15日の「Tech Factory」で 掲載された記事「IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(6)」を一部加工し、転載しています。

今回は、PCベースのコントローラーに特化した分野で独自路線を貫きながら、多くのユーザー企業の課題解決に取り組む、ハイバーテック 代表取締役社長 伊東健氏に話を聞いた。

 

メーカーに依存しないという基本コンセプトを貫き、成長してきた

  • ハイバーテックでは、これまでどのような事業を行ってきたのですか。

伊東氏 当社はPCベースのモーションコントロールに特化してきた会社で、34年間の実績があります。現在は、業務のほとんどがモーションコントロール用の標準製品のハードウェアやソフトウェアの提供で、当社は開発や設計を中心に行い、製造は外部に委託しています。お客さまのほとんどが、半導体の製造・検査装置を製造している企業で、自社で使用する装置を開発している企業と、外販用の装置を製造している企業に分かれます。

 

  • ハイバーテックがこれまで34年間にわたり、PCベースのモーションコントロール分野で成長してこられたポイントは何ですか。

伊東氏 当社では使用するモーターのメーカーを特定しないということを基本コンセプトに掲げています。他より圧倒的に優れた性能を実現したい装置メーカーやエンドユーザーの生産開発部にとっては、一社の産業機器メーカーが提供するモーターやコントローラーに依存していては他と差別化ができません。お客様には複数の産業機器メーカーが提供するコンポーネントを適材適所で選定し、ムダなく最適な組み合わせで最高性能を発揮できるよう、異なるメーカーのコンポーネントを組み合わせて利用したいという要望があります。そのため当社では、多数のメーカーのモーターやコンポーネントを利用できるインタフェースを提供し、その上で、都度求められるさまざまな最先端のモーション技術を付加することでお客さまから支持されてきました。

 

装置開発企業が本来やるべきことに注力できなくなっている

早くから、国内の“ガラパゴス化”の課題を把握し、PCベースのモーションコントロールの分野で強みを発揮してきたハイバーテックであるが、装置開発の現場には、さまざまな課題があるという。伊東氏はそうした課題が、装置開発企業が本来注力すべき分野に集中することができない要因になっているとみている。

伊東氏 1つの装置を開発した後で、派生装置を作ったり、装置の動きを変更させるような追加改造を行ったりすることがよくあるのですが、そのようなときには、それぞれのバリエーションの装置を、開発担当者がその都度開発してきました。しかし、もともと開発した担当者でなければ、基本となる動作と同じ動作を再現させるのが難しく、非常に多くの時間がかかってしまうのです。

 

  • PCベースの開発であっても、誰でも対応できるわけではないということなのですか。

伊東氏 そうです。ユーザーにとって最近の一番の課題は、開発の人材不足です。特に半導体装置メーカーでは人材がとても不足しています。人の流動が激しくなり、開発した人が退職してしまい、作った装置だけが残って誰も改変することができない、仮にできたとしても非常に多くの時間がかかってしまう、という状態が起こっているのです。そこで、少しだけ異なるようなプログラム開発を、繰り返し行うというムダな手間を省きたいというニーズが多くあるのです。

 

  • 開発現場では、他にはどのような課題があるのですか。

伊東氏 半導体製造・検査装置は、「画像」「処理モーション」「I/O」の3つの要素で構成されていますが、これらの3つの要素を1台のPCの上で実行すると、画像処理がリソースを抱え込んでしまうために、モーションとI/Oのリソース不足が起こり、動きがぎくしゃくするという問題が起こります。そこで、そのような問題を避けるために、ユーザーの多くはリアルタイムOSを使うのですが、リアルタイムOSの供給元がロット数の少ない工業用装置に対して丁寧なサービスを提供してくれないという声も聞かれます。さらに、PCの供給保証が短期化していることもあり、工業用に特化したPCを使用できなければ、長期間にわたって装置を作り続けることが難しくなってきています。このようなさまざまな課題の他、開発者の人材不足という大きな課題もあり、ユーザーは、いかに自社の開発装置の差別化を図るか、という本来注力しなければならないことに集中できなくなっているのです。

 

将来を見据えた装置の改変にも対応できるソフトウェアPLCを採用

半導体製造・検査装置で起こっているさまざまな課題を解決するソリューションとして、ハイバーテックでは、世界的な規格であるPLCopenによるモーションの機能体系をベースとすることで、モーションの使い勝手を共通化した「HCOS」シリーズを製品化し、2016年から提供している。HCOSは、動作検証済みのIPCにプラットフォームを入れ込んだ一体型のコントローラーである。HCOSを開発した背景には、人材不足で余計な手間を省きたいという要望や、保証期間の短期化で管理が大変になっていることなどもあるが、東日本大震災もきっかけになっているという。

 

伊東氏 ハードウェアの供給元を1社に限定していたことで、東日本大震災によりメーカーの工場が被災し、製造を一時ストップせざるを得ないという事態に遭遇したユーザーが多くあります。それ以降、ハードウェアを入れ替えてもソフトウェアを使って、作り替えられるような仕組みを作っておく必要があると考える企業が多くなりました。

 

  • 最近ではモーターのインタフェースは多様化していますが、HCOSはそのような傾向に対応しているのですか。

伊東氏 はい、従来型のボード製品やUSBでつながる通信型のモーション製品、EtherCAT対応製品など、さまざまなインタフェースのコントローラーがありますが、いろいろなものを使った際に、お客さまにとっては、同じソフトウェアで使えるようになることが理想です。そこで、HCOSを開発するに当たり、ソフトウェアPLCの「CODESYS」を採用しました。

 

  • 他にもソフトウェアPLCはあると思いますが、CODESYSの採用に至った最大のポイントは何だったのですか。

伊東氏 装置全体の基本的な流れを制御するような仕組みを、これまでユーザーは、改変のたびにほぼスクラッチから作っていたわけですが、実はかなりの部分が共通化でき、それらはCODESYSにほとんど含まれています。例えば、リアルタイムOSの設定や異なるメーカーのデバイスにアクセスするインタフェース、そしてモーションの基本動作などは、開発者がスクラッチで組み上げる必要はありません。CODESYSを利用することで基本部分の開発を共通化し、お客さまが本来固有に構築したい特殊機能の開発だけにリソースを割くことができるようになるのです。また、CODESYSには、先々必要となる機能を含めて全て包含されています。日本では、取りあえず、今必要なものだけを開発するという傾向にありますが、CODESYSのフレームワークは将来を見据えて設計されているため、将来どんな追加要求がきても柔軟に対応できるということです。新たな要求や特殊な機能は、CODESYSという共通プラットフォームに対していわゆる「ソケット」として開発することで、簡単に誰でもソフトウェアを拡張させることができます。ここが、大きなポイントです。

 

国内大手メーカーのPLCへの対応も見据えた取り組みを開始

ハイバーテックでは、これまで欧州を中心とした標準規格のインタフェースに対応するHCOSの展開に取り組んできたが、今後は国内の大手メーカー製のコンポーネントとの組み合わせにも対応することで、より多くのユーザーのニーズに応えることを目指している。

 

  • HCOSはより多くのユーザーニーズに対応するために、国内の大手メーカーが提供しているコントローラーとの接続も視野に入れているのですか。

伊東氏 はい、やはり国内の大手メーカーが提供するコンポーネントを使用しているユーザーの方は多くおりますので、“メーカーに依存しない”というコンセプトを掲げている当社としては、さまざまなメーカーの機器類への接続を可能とすることを目指しています。近く、MECHATROLINKやSSCNETのようなフィールドネットワークにも対応した製品を開発する計画です。

 

今回は、半導体製造・検査装置の開発現場で起こっている課題にいち早く目を付け、装置開発企業が本来注力すべき、他社製品との差別化に集中できるよう、装置の制御プラットフォームと動作検証済みのIPCを一体化した製品の提供に取り組まれているハイバーテックの事例を紹介した。“国内のガラパゴス化”に早くから気付き、業界の課題解決に向け、地道に活動した企業であることがお分かりいただけただろう。