*本原稿は、2017年10月13日の「Tech Factory」で 掲載された記事「IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(7)」を一部加工し、転載しています。

“IIoT”をキーワードに、計測制御や遠隔監視システムのイノベーションをユーザー企業に提案しているコンテック 執行役員 グローバル営業本部 本部長の西山和良氏に話を聞いた。

 

産業用PCの領域で成長を遂げてきたコンテック

PCの普及とともに成長してきたというコンテック。PCの手軽さを産業用機器の制御にいち早く取り入れるという先見性で、業界をリードしてきた。

 

  • コンテックの成り立ちを教えていただけますか。

西山氏 コンテックは1975年、世界で1、2を争うマテリアルハンドリングメーカーであるダイフクが、電子機器分野において新たな事業に挑戦するという目的で、社内ベンチャー企業として設立されました。コンテックという社名は、“電子を使ったコントロールテクノロジー”という思いが込められています。

 

  • 1975年といえば、PCが世の中に登場し始め、これから大きなムーブメントが巻き起こるという時期ですね。

西山氏 当社は、そのPCの手軽さをFAの現場に生かすことができないかと考え、それ以降、多種多様なセンサー・フィールド機器に対応した計測制御用の拡張ボードを提供しています。PC内部にI/Oの装置や通信ボードを組み入れて、産業用PCとして提供してきました。今では、FA制御をはじめ、各種の社会インフラ設備、太陽光発電などのエネルギー関連設備、物流設備といった、PCベースで制御する分野で市場をリードする企業にまで成長しました。

 

IIoT実現の課題である“つなげる”部分を解決する「CONPROSYS」

 産業用PCやその周辺機器の分野で成長してきたコンテックであるが、2016年からさまざまな産業界で利用できるIIoTソリューションデバイスとして「CONPROSYS(コンプロシス)」の提供を開始した。その背景には、産業界におけるIIoTに対するニーズの高さがあったという。

 

  • 産業用PCの分野で活躍していたコンテックが、IIoTソリューションデバイスとしてCONPROSYSを開発するに至ったのはなぜですか。

西山氏 インダストリー4.0の流れが一気に広まり、企業はIIoTに注目し始めました。この流れを早い段階で捉え、IIoTを実現する上で課題となっている“つなげる”部分を解決するソリューションとしてCONPROSYSを開発したのです。デバイスシリーズでは、センサーやアクチュエーターに接続して、データを収集する「M2Mコントローラー」シリーズや、既存のPLCに接続することで、PLCで電子制御している機器類のデータを簡単に取得できる「M2M Gateway」シリーズなどがあります。いずれも標準通信規格であるOPC UAを採用し、M2M GatewayシリーズはマルチベンダーのPLCに対応しています。いずれのシリーズも既存設備を含めたさまざまな機器類をつなぎ、クラウド環境でデータの管理を行うという、IIoTを簡単に実現できるソリューションデバイスです。また、ソフトウェアPLC「CODESYS」を内蔵したリアルタイム制御エンジンとして「PACシリーズ」も提供しています。当社の製品は、特定のメーカーに依存せずに、全てオープンな環境でシステム構築ができることを基本に開発されています。このように、工場の他、社会インフラやエネルギー産業、物流など、さまざまな産業界におけるIIoTの実現をサポートするソリューションとしてCONPROSYSを提供しています。

 

  • IIoTデバイスのCONPROSYSはモノづくりの現場だけではなく、さまざまな産業界で利用されているのですね。

西山氏 はい、そのキーワードは“リモートコネクテッド”です。従来は人が行っていた“O&M(オペレーション&メンテナンス)”の分野の業務を、IIoTの仕組みを構築することで、リモートで行えるようにするという取り組みです。

 

  • 具体的にはどのような使われ方があるのですか。

西山氏 例えば、コインランドリーの洗濯機に当社のCONPROSYSをデバイスとして付けていただき、コインランドリーのオーナーが洗濯機の稼働状況を遠隔で確認することができる、という仕組みが実際にあります。コインランドリーの利用者には、もうすぐ洗濯が完了するということをメールで通知できます。IoTのメリットをうまく利用している良い事例だと思います。

 

  • ソフトウェアPLCのCODESYSを活用したリモートコントロールの事例もあるのですか。

西山氏 CODESYSを採用したPACシリーズを使った事例としては、例えば、大和コンピュータのメロン農園の自動化があります。これは、高品質なブランドメロンを効率的かつ低コストで栽培するための自動化システムを実現した事例です。メロン栽培における環境情報やメロンの状態をセンシングし、それに応じた水やりなどを行うためのアクチュエーターの制御を行っています。熟練の農家によって蓄積されたノウハウをセンシングとデータ解析による定量化や、栽培段階からのトレーサビリティーを実現することで、品質改善などの大きな付加価値を生み出しています。他にも水処理装置の制御に使うという事例もあります。水処理をするために専用薬品液の注入を制御しながらクラウドにデータ蓄積を行い、注入量などを最適化するような使い方です。

 

  • これまで製造現場の話を中心にIIoTについて語ってきましたが、工場以外でもいろいろと使われているのですね。

西山氏 はい、IIoTはモノづくりの現場に限ったトレンドではありません。産業界全体に広がっていますので、当社の製品の使い方はさまざまです。

 

PACシリーズにソフトウェアPLCの「CODESYS」を採用した理由

コンテックでは、ソフトウェアPLCのCODESYSを内蔵したリアルタイム制御エンジンPACシリーズにより、モノづくりの現場もサポートしている。CODESYSは、国際標準であるIEC 61131-3に準拠し、制御プログラムの作成やフィールドバスの設定などをシームレスに行うことができる開発環境が統合されており、製造業などがオープンステムを構築する上で最適であるという。

 

  • PACシリーズに、ソフトウェアPLCのCODESYSを採用したのはなぜですか。

西山氏 当社では、もともと制御のオートメーション化を実現するために、規格化された通信システムなどを、産業用PCに組み入れて提供していました。しかし、PCの手軽さという特徴を、大手メーカーが提供しているPLCでも提供できるようになり、PCと従来型のPLCとの違いがなくなってきてしまい、PCベース制御の強みを十分に生かすフィールドが減ってきているという状況があります。そこで、当社の技術力を生かしながら、CODESYSを採用することで、よりオープンな環境で制御システムを作り上げることができる仕組みを、デバイスとして開発したのです。

 

  • CODESYSを採用したデバイスにより、モノづくりの課題解決につながるということですか。

西山氏 はい、当社の顧客は半導体製造装置をはじめ、装置や機械設備を作る企業が多いのですが、モノづくりの現場での最大の課題は生産性です。しかも、設備を作るときの生産性と、作った後のメンテナンス効率化の両方が課題としてあります。PCはオープンで誰でも使いやすいのですが、OSが頻繁に変わりますので、それに合わせて開発環境もどんどん変わっていきます。PCを制御するドライバも変わってしまいます。そのように、OSの変化に追従して開発環境をその都度作っていく必要がありました。これでは、装置メーカーの開発者は本来開発すべきアプリケーションの開発の前段階で足踏みをしてしまうことになります。そのような煩雑で効率化を妨げている課題を解決できるキーとして、CODESYSを採用したのです。

 

  • 従来の仕組みでは、ユーザーがアプリケーションの開発に集中できないということですか。

西山氏 そうです。さらに、設備を作った後で、その設備を海外に出荷していただくケースも多くあり、そうなると、海外でのメンテナンスが必要になります。そのときに、日本だけで通用するような環境で作っていたのでは、メンテナンスを十分に行うことができません。従来は国産メーカーが開発したPLCを使っていた企業でも、海外での事業展開を視野に入れて、よりオープンな環境のPLCに変更していきたい、という要望を多く聞きます。

 

 

PLCを取り巻く環境改善は、まさに始まったばかり

コンテックが提供するCONPROSYSは、遠隔監視や遠隔コントロールを必要とするIIoTの仕組みの一部として利用されつつある。しかし、モノづくりの現場での採用には課題が残るとみている。

 

  • 製造現場でのPACシリーズに対する反応はどうですか。

西山氏 正直、まだまだこれからというところです。日本の製造現場には、従来型のPLCが根強く残っており、CODESYSを採用したPACシリーズのメリットを、さらに強力に訴えていかなければならないと考えています。理想とする“つながる工場”を実現するためには、将来のメンテナンスも含め、特定のメーカーに依存する閉じられた仕組みではなく、“真にオープンな環境”が必要であるということが、まだまだ認知されていないと思います。そのためにも、PACシリーズの本来の特徴をさらに生かせるようなデバイスに改良していくことも視野に入れています。

当社では国内のみならず、海外にも展開しており、特に中国や東南アジア、インド市場ではCONPROSYSに大きな手応えを感じています。やはり“リモートコネクテッド”をキーワードに、社会インフラやビルの制御などのスマートシティーの実現に活用していただいています。海外での実績を生かし、FAの分野を含め、国内の各種産業の制御領域をより開拓していこうと考えています。

 

IIoTの普及に向けて、製品改良に挑戦し続ける

コンテックでは、中国、東南アジア、インドでの需要をにらみ、より低い価格帯の製品開発も目指しているという。海外における実績をベースに、製造業を含めた各種産業界でより多くの企業のニーズに対応できるように、製品の改良を常に検討していくという。

 

  • 中国や東南アジア、インド市場でのユーザーの反応を、日本の産業界に生かしていくということですか。

西山氏 CONPROSYSの製品コンセプトは、IIoTのデバイスを顧客が開発する負担を全部取り払い、本来注力すべきアプリケーションの開発だけに集中できるような環境を提供することです。“つなげる”ことに翻弄(ほんろう)されていたこれまでの課題を一気に、容易に解決し、クラウドへの対応も含め、新しい技術への対応やつまずきそうな厄介な部分は、全て当社のデバイスで解決していくということです。当社が提供するような製品がより広く普及することで、IIoTの実現も早まっていくのだと思います。

 

今回は、ソリューションデバイスを提供することで、製造業のみならず、各産業のIIoT化の実現をサポートしているコンテックの事例を紹介した。日本の製造業におけるオープンな環境の実現に向け、ガラパゴス化したPLCの領域に風穴を開けるために、製品の改良にも果敢に取り組んでいることがよく伝わってきた。