今やAIという言葉は、連日、新聞、TV、雑誌、ウェブといった様々なメディアで取り上げられており、業界を問わず、実際にAIを活用した製品やサービスの開発、または、使用を開始したといった記事が掲載されている。

直近の報道を見ても、NTT東日本がAI搭載カメラの開発・販売を行っているアースアイズとの提携により、AIカメラで店舗内の不審者を検知し、店員のスマホなどにその客の画像や場所を通知することで万引きを未然に防ぐ仕組みを開発。すでに東京都内のドラッグストアでは万引きによる被害額を約4割減らせたことが報じられている。また、日立製作所が異なる機能を持つ複数の物流ロボットを効率的に動かす制御システムを開発し、品物を運ぶロボと仕分けするロボをAIで一体的に制御することで、荷分け作業の時間を38%短縮することに成功したという。

また、経済産業省と国土交通省は、共同でインフラ保守向けAIシステム開発・導入で連携し、2018年度中をめどにデータ蓄積用のプラットフォームを構築する計画であることを発表している。ある一般紙でも、政府が策定する新たな技術革新戦略の中で、産業に幅広く活用されるAIを扱う人材を育成することが柱となっているなど、国としても、AIの活用を産業発展の重要な資源と考えている。

製造工程におけるAIの活用については、あるIT系雑誌で、AIを活用した画像認識技術を導入したキューピーの事例が紹介された。同社では、ベビーフードに使う「ダイスポテト」をつくる際、ポテトについている黒い斑点や、形が整っていない“不良品”が出てしまうが、その検査を熟練の作業員の目で行っていた。この作業をAIで代替したいと考え、グーグル、ブレインパッドと開発を始め、良品データだけを読み込む方法で、システム構築を進めた。その後、何度もチューニングを変更してシステムを改良し、2018年夏には本格導入に踏み切る予定であり、4月時点でAI導入後の検品効率は、2倍に上がっているという。

また、以前の「IIoT特集」で紹介したが、ルネサスエレクトロニクスでは、検査工程にAIの導入したことで、誤って異常と検出した数が、エンジニアが行っていた時の1/10以下になり、億単位のコスト削減に成功している。

AIは、作業の効率化を図り、また、人手不足を解消する手段として考えられている。多くの製造業では現在、工場をネットでつなぎ、いかに生産性の向上を果たすかを検討しているが、それにはAIを導入すれば良いということなのだろうか。

AI活用の現状

アクセンチュアが、世界6カ国(日本、中国、フランス、ドイツ、イタリア、米国)、6業界(自動車、トラック、自動車部品、産業/電気機器、重機、耐久消費財)のメーカー500社を対象に調査した最新レポートによると、調査した企業の98%がAIを活用した製品の改善に着手しているという。

日本と世界におけるAIの意識の違い

しかし、世界と日本を比較したところ、問題意識や取り組みに乖離があることが明らかになった。アクセンチュアの調査によると、日本人の労働者の25%(世界平均15%)は、AIの導入により自身の仕事にそれがどのような影響をもたらすかのイメージを持てないことが確認された。また、AIに対してポジティブな感情を持つ労働者は22%(世界平均62%)にとどまっている。さらに、過去1年間にAIとの協働に向けたスキル習得に取り組んだ人の割合は、世界平均83%に対して日本は46%。AIと協働するために新たなスキルの習得が重要とするのは、世界平均68%に対して日本は24%といずれも世界と日本では乖離があった。

キューピーのケースの場合、キューピーの現場の従業員は当初、AIを「宇宙から変なモノを持って来たな、くらいの感覚」だったとメディアは紹介しており、現場の人間にとっては、AIとは何かがまだまだ十分に理解されていない状況であると考えられる。

AIはIIoT実現のツールのひとつ

IIoTの実現に向けて、今後、AIは重要なキーワードとなるだろう。しかし、IIoT(スマートファクトリー)とは、工場内のあらゆる機械とインターネット環境を繋げることで、機械の稼働状況を詳細に把握・蓄積し、この情報を元に、工場全体の効率的な稼働を実現することで、最大の利益をうみ出す環境を整えることであり、それは、単純にAIや自動化ロボットを導入し、それらをインターネットでつなげば完成するものではない。AIやロボットは、人手不足の解消には大きな役割を果たすが、それでも工場には、各工程で業務を担当する作業員がいる。現状においては、これまでに培ってきた作業員のノウハウ、経験が非常に重要な役割を担っている。

しかし、AIによる自動化が進むことにより、ものづくりの本質を理解しているエンジニアが減ってしまうことが考えられる。すると、予期せぬ問題や社外での事故が発生した際、早期にそれらの問題に対応し、解決することが出来なくなってしまい、結果的に“最大の利益をうみ出す環境”を作り出すことができなくなる。

AIとは、あくまでもIIoTの実現のひとつのツールに過ぎず、AIによる効率化を図ると同時に、それらのシステムを最大限に活用できる人材育成、そして、特定の人がこれまで担ってきた経験やノウハウを工場全体で共有できるシステムの構築がIIoTの実現につながることになる。そのためにも、AIが得意な領域と人間が得意な領域を切り分け、業務プロセスを見直して組み直し、協働することが重要ではないだろうか。