製造業では、「スマートファクトリー」への取り組みが進んでいる。2018年5月、東京ビッグサイトで開催された「スマートファクトリーJapan2018」においても、150以上の企業・団体が出展して各企業の最新の取り組みを紹介しており、多くの来場者が足を運んだ。

スマートファクトリーとは、工場内のあらゆる機器や設備、工場内で行う人の作業などのデータをインターネットでつなげて取得・収集し、それらのデータを分析・活用することで、最大の利益を生み出す環境を満たした工場をいう。スマートファクトリーが注目されるきっかけになったのは、ドイツ連邦政府がモノづくり革新プロジェクトとして進めている「インダストリー4.0」である。これは、ドイツが2011年に提唱したもので、製造業界全体の構造をデジタルと結びつけることで効率化と高品質化を実現し、産業界全体で利益を高めるという取り組みである。その中心的な役割として、スマートファクトリーを位置づけている。日本においても、ドイツの企業と取引するケースが多かったこともあり、国内での関心が一気に高まったと言われている。

なぜスマートファクトリーが求められているのか

製造業にとって、工場の生産性向上や設備稼働率の向上は、企業の成長や発展にとって非常に重要な要素となる。さらに、消費者のニーズが多様化する中で、少量、多品種の生産にも対応することが求められており、製造現場においては“柔軟性”と“効率性”の両立のため、日々、システムや作業工程などの改善に取り組んでいる。こうした改善は、これまでは人の手によって行われてきたが、スマートファクトリー化によって様々なデータを活用できるようになると、今まででは知ることができなかった改善のポイントを見つけることが可能となる。また、各工程からのデータを一元的に管理することで、工場内の全体最適化が実現できることが期待されている。

日本でのスマートファクトリー化が加速する背景として、IT系のウェブメディアでは、「人手不足」への対応があると紹介している。経済産業省が毎年発行している「ものづくり白書」の2018年版によると、人材確保は「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」という回答が前年の22.8%から32.1%と大きく増加した。また「特に課題はない」とした回答者は、前年の19.2%から5.8%へと減少しており、人手不足の影響を全体的に色濃く受けていることが見て取れる。そして、今後、期待する対策としては「自動機やロボットの導入による自動化・省人化」や「IT・IoT・ビッグデータ・AIなどの活用による生産工程の合理化」などが高い比率を占めた。こうした課題と期待から、スマートファクトリー化が本格的に加速し始めたといえる。

出典:2018年版 ものづくり白書

スマートファクトリー実現を阻む「壁」

しかし、スマートファクトリー化を進めるためには越えなければならない「壁」がいくつかある。その1つが“工場内の機器をつなげる”ことである。工場内には古い機器や異なるベンダー間の異種環境が乱立しているために、そもそも製造装置のデータをネットワーク経由で送るということが難しい。また、それぞれの機器がデータ取得を前提としておらず、標準化もされていないために、それぞれの機器やプロトコルによって、取れるデータの種類や粒度、フォームなどが異なっている。「IIoT Times」では、これまでにも日本国内の製造現場による機器同士のつながり方が、グローバルでの競争においては“ガラパゴス化”してきてしまっていること、そして、それを解決するための企業の取り組みを紹介してきた。

ヤマハ発動機
ハイバーテック
コンテック

近年では、オープンなフィールドネットワークである「EtherCAT」を採用する企業や、大容量のデータを高速またはリアルタイムに処理することが可能となる「エッジコンピューティング」の取り組みが始まるなど、工場をつなぐための動きが進んでいる。しかし、スマートファクトリーを実現するためには、工場内の機器をつなげるだけでなく、集めたデータをどのように活用して価値を生み出すか、データのセキュリティをどのように確保するかなど、まだまだ多くの「壁」が存在している。

今後の製造業の課題

「スマートファクトリージャパン 2018」で講演した経済産業省の多田明弘氏は、「製造業を取り巻く環境は非常に厳しい。経済産業省の調べでは、2017年及び2018年の製造業における売上高と経常利益はともに増加傾向であり、今後の見通しについても、向こう3年間は明るいと予測されている。しかし、長期的な課題に目をやると“データ活用”と“人材確保”について、改善の兆しは見えていない」と指摘した。経済産業省は、2017年3月に日本の産業の目指す姿を示すコンセプトとして「Connected Industries(つながる産業)」を発表した。中国では「中国製造2025」、インドでは「Make in India」など、世界各国でも将来に向けた国家的プロジェクトを打ち出している。グローバルでの競争においては、さらに“あらゆるものとつながる”ための改善が求められている。