以前、「IIoT特集」において、「エンベデッド・ビジョン」について紹介した。そして、エンベデッド・ビジョンの実用化に向け、アメリカでは様々な動きを見せており、ウォルマートでの棚を管理するロボットやAmazonのレジに人がいないコンビニ「Amazon GO」などを紹介した。

エンベデッド・ビジョンの広がり

エンベデッド・ビジョンの実用化へ向け

日本においても、少しずつではあるが、実用化に向けた取り組みが広がっている。ローソンでは、今後1年以内にレジカウンターで販売するファストフード(からあげクン、Lチキ)の販売状況や在庫を、画像認識技術で管理するシステムを導入することを産業経済紙が取り上げた。ショーケースの天井部分に設置したカメラで、本部が状況を把握して分析し、機会損失の低減や売り上げ増につなげるという。

化粧品、日用品、一般用医薬品の卸売事業を行うPALTACは、米国のスタンダード・コグニション社と画像認識及び無人レジに関する技術の導入を目的とした契約を締結したことが報じられた。店舗内の天井に設置されたカメラの画像を最新のAI技術やマシンビジョンを活用し、消費者の購買にかかわる精算までを自動化・無人化できる技術を、特定の小売店舗で実証実験する。

ステーキハウス ブロンコビリーのある店舗では、人や台車などの対象物を見分けて後について走行する追従運搬ロボットを納入し、食事を終えた後の食器の運送をロボットが行う。これにより、店員は鉄板などの重い食器を調理室へ運ぶ必要がなくなり、次の客へのテーブルセットに集中することができる。

長崎県のハウステンボスでは、ロボットたこ焼き屋をオープン、多軸ロボットを活用し、AIによる画像認識を通じたディープラーニング等の最新技術を組み合わせ、たこ焼きを調理している。

一般紙では、8月にも人が少ない離島や山間部に限り、ドローンを使って荷物を配送することを解禁する可能性があることを報じた。これまで目視できる範囲でしかドローンを飛ばせないという規制があったが、国土交通省は一定の条件のもとでこの規制を緩和することを決めた。現状では、安全を確保するための要件は様々あるが、これが実現することによって、過疎地の買い物弱者にとって便利になるほか、西日本豪雨のような災害時の物資輸送への応用も期待されている。

日本でのIoT導入率

エンベデッド・ビジョンをはじめ、IoT、AI、産業用ロボットなどの発達による産業構造の変革は、「第4次産業革命」と呼ばれており、IoTをキーテクノロジーとし、上記のような新しいサービスの提供、付加価値の創造が生まれている。製造業においては、産業用ロボットの導入と技術革新によって、すでに製造現場や効率化が図られている。また、近年ではAI技術の活用により、製品の品質検査や製造装置の異常検知などが人間の手や目を使わずに出来るようになっており、コスト削減や人手不足の解消につながっている。

内閣府が発表した「平成30年度 年次経済財政報告(経済財政白書)」でも、製造業については、工場内の温度や圧力、流量といったデータの関連性をAIで分析し、運転安定化や早期の異常検知につなげている。また、ロボットにおいても、ものづくりの強さを反映して、製造業を中心にすでに導入されており、国際的に優位に立っていると考えられるとまとめている。

しかし、日本全体でみると、IoTの導入状況はあまり進んでいない。前述の経済財政白書では、第4次産業革命につながる日本企業の取り組みについて、IoTやAI、ビッグデータを活用している企業の割合は15%にも満たないとしている。また、IDC Japanが2017年に国内企業3,941社に行った調査によると、IoTを既に利用していた企業は6%、導入率が最も高かった産業分野である製造/資源でも、導入率は9.1%であったと報告している。

IIoT実現の壁

今後のIoT導入意向についても、経済財政白書では米国、ドイツがともに70%~80%程度となる一方、日本は40%程度にとどまっており、日本企業の取り組みは、世界の企業に比べるとやや慎重になっている面が見られると指摘している。また、産業データの取扱い・利活用にける課題・障壁に関する調査では、日本企業は、他国と比較して「収集されたデータの利活用方法の欠如」、「費用対効果が不明瞭」、「データを取り扱う人材の不足」を懸念している企業の割合が高く、日本でのIoTの導入率や導入意向の低さに影響している可能性があると考えられている。

IoTやAIを活用することにより、売上高や経常利益額が増加する傾向にあることや、労働生産性も向上する割合が高くなることは明らかになっている。しかし、導入するためのコストや人材の不足など、導入へのハードルが高いという実情も見えてきている。他社の事例や導入効果など、各メディアで連日、IIoTに関する様々な情報が発信されているが、その中から有益な情報を選び、IIoT実現に向けてすべきことを見つけていきたい。