*本原稿は、2016年9月13日の「マイナビニュース」で 掲載された記事「 日本メーカーが大苦戦!マシンビジョンの世界で何が起きているのか?(1)」を一部加工し、転載しています。

工場の自動化を実現する技術の1つであるマシンビジョン。かつて日本メーカーのカメラが大活躍していたマシンビジョン市場は、ここ10年で大きく変化した。この10年でマシンビジョン市場に起きた変化と現在のトレンド、そして今後の展望について解説する。

近年、画像処理技術が幅広い分野に適応されることで、その画像処理の入力デバイスであるカメラが数年前と比較して圧倒的な台数が市場に普及した。

その流れを大きくけん引したのが自動車やスマートフォン(スマホ)に搭載されるカメラであることは皆さん周知の通りである。

技術面でみると、画像センサーがCCDからCMOSに変化したことで、センサーの生産性が高まり、低コスト、低消費電力、低サイズが実現し、この流れを作った。もちろん自動車やスマホという民生製品に採用されたことで、大量生産によって価格が下がったことも市場での普及に貢献した。技術的な生産性の向上と、民生分野での適応が大きなうねりを作り出したと言える。

カメラの普及は、今後も加速していく。自動車だけを見ても、標準となりつつあるバックモニターやドライブレコーダーに加えて、今後は衝突回避や自動駐車などが標準となり、さらには自動走行、ドライバーの居眠り検知と、画像によるセンシング技術が求められる分野が広がっている。同様に自動走行は自動車だけに限らず、物流センターでの自動走行フォークリフト、お掃除ロボット、ドローン、サービスロボットなどにカメラが搭載され始めている。

これら我々の身近な世界でのカメラの普及とは異なり、それ以前からカメラが頻繁に用いられた分野がある。それが工場の自動化を助けるFA用途での画像処理であり、一般的にはマシンビジョンと呼ばれている。人間の目と頭脳に代わってモノづくりを自動化する技術であり、その用途としては検査(欠陥、異物、ヒビ、割れ、シミなど)や位置検出、計測、個数カウント、バーコード読み取り、文字認識、ばら積みピッキングなどが挙げられる。適応分野としては、半導体製造装置、電気電子、ロボット、自動車、医療(薬品)、印刷、物流、農業など、その範囲は多岐にわたる。

以下、その例をいくつか挙げる。

マシンビジョンの分野で求められるカメラは工業用カメラと呼ばれ、通常の民生向け一眼レフやデジカメ、スマホやお掃除ロボット搭載カメラなどとは異なる。その違いは、大きく以下の点である。

  • 長期供給(10年間)
  • 高画質
  • 高速取り込み
  • 頑丈な筐体 : 外部機器からのトリガー信号による撮像

この中でも重要なのが長期供給であり、例えば一眼レフカメラであれば非常に高画質な画像が得られるものの、モデルチェンジが頻繁に行われるため3年以上継続して同じモデルを購入できない。モデルが変更されると、それによってレンズや照明、ソフト処理など含めて装置全体の再設計、開発、検証が必要となり、膨大な工数を要する。また、スマホなどのカメラでは工業用途に耐えられる画質を得られず、検査などには到底活用できない。そのため、民生カメラと工業用カメラは全く異なる分野であり、活躍するプレーヤー(メーカー)も異なる。

この工業用カメラの世界で何が起こったのか、なぜ日本のメーカーが苦しい状況に置かれるようになったのか、次回からはこの10年間を振り返りながらテクノロジーの変化を追っていく。そしてさらには、この先10年においてどのような変化が起ころうとしているのかについても触れていきたい。この事例は工業用カメラの世界だけに当てはまるものではなく、あらゆる分野に当てはまるビジネス変化の事例として参考になるのではないだろうか。これまで、世界中の工場で稼働する工業用カメラは日本製が活用されてきた。しかし、2005年頃から海外メーカーが一気に世界中のシェアを奪い始め、この10年程度でその市場シェアが一変してしまった。

 

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