*本原稿は、2016年10月25日の「マイナビニュース」で 掲載された記事「 日本メーカーが大苦戦!マシンビジョンの世界で何が起きているのか?(4)」を一部加工し、転載しています。

工業用画像処理カメラの世界は、アナログからデジタルへの移行(=インターフェースの変化)、そしてCCDからCMOSへの移行(センサーの変化)という2つの大きなうねりにより、活躍する企業が入れ替わるという激動の時代を経験した。そしてこの世界は、今後も益々レッドオーシャンと化していくことは間違いない。標準的な機能だけを備えたカメラの世界では差別化が困難になり、規模で勝てる企業が生き残り、そこで勝負できない企業は淘汰もしくは再編され、もしくは特殊用途を備えたカスタム対応で生き残りをかけていくことになる。

この市場で世界No.1の地位を築いたBasler社(ドイツ)は、今後の生き残り戦略としてLEAN(リーン)コンセプトを唱えている。LEANとは「薄い」つまり「徹底して無駄を排除する」を意味しており、お客様に「必要な分を必要な分だけ」購入していただくということだ。

 

潮流を読み、製品設計で徹底的に議論

Basler社ではカメラを設計する際に、電子部品の発達によるコスト削減はもちろん徹底して行うものの、それだけにとどまらず不要な機能が存在しないか徹底して議論することで大幅なコスト削減を実現してきた。

無駄を省くとはどういうことか。例えばBasler社は、「今後はCCDを搭載する必要が無いからCMOSに限定しよう」と時代の潮流をいち早く読み、それを製品設計の際に無駄を省くという観点から議論を重ねることで、以下の図の通り2014年に更なるコスト削減を実現した。カメラプラットフォームを設計する際には、多くの異なるセンサーを搭載できるように設計するのだが、CCDを搭載しないと決断するだけで電子部品の数は圧倒的に減る。

 

 

お客様の無駄な投資を抑える

LEANコンセプトは製品自体の低価格化にのみ当てはまるものではない。

一口にカメラを購入すると言っても、求める画質や解像度はアプリケーションによって大きく異なる。しかし実際には、自分の用途にぴったりとくる製品が存在しない場合、少しオーバースペックの製品を購入して要求を満たしている。

現在、数多くのCMOSメーカーが存在しているが、Basler社はさまざまなメーカーのCMOSセンサーを用いたカメラを次々にリリースしている。これは「お客様が徹底して無駄を省けるよう、用途にジャストフィットした製品を購入できるようにする」という考え自体を付加価値とする戦略がベースにある。現在では、ソニー社、ON Semiconductor社、Aptina社(ON Semiconductorにより買収)、CMOSIS社、e2v社といったセンサーを用いて製品ランアップを揃え、400種類を超えるまでに至っている。

Basler製カメララインアップの一部

 

見逃されていた「レンズ」にも着目

さらに、Basler社は活躍の範囲をカメラからレンズに広げる戦略にも出た。これまで述べてきたように、カメラの世界は大きな2つのトレンドによりコストを下げることに成功したが、この10年以上に渡ってコストが変わらない世界がある。それがレンズであり、Basler社はそこに目をつけた。カメラが売れるたびにレンズが売れるのに、レンズの世界だけコスト体系が変わっていないところに商機があると考えた。具体的には、CCDからCMOSへのセンサートレンドが発生した際に、実はセンサーのサイズが変化したことをレンズメーカーは注目していなかった。これまでCCDといえば2/3インチ以上が主流であったが、CMOSに移行してから1/2インチ以下が広く活用されるようになった。つまり、市場に出回っているレンズは2/3インチ分の材料(ガラス)を利用して製造されているが、Basler社は1/2インチ以下に最適化されたレンズを、独自に設計して販売するようにしたのだ。これも、LEAN(リーン)コンセプトである。

今回はレッドオーシャン化する市場での戦い方の例として、Basler社の戦略を紹介した。徹底した市場調査によってトレンドを先読みし、自社製品を必要な機能に限定した設計とすることで無駄を省く、そしてラインナップを多くそろえることでお客様の無駄な投資を抑えることを付加価値とする考え方、さらには自社が巻き起こすトレンドによって影響を受ける周辺機器に対しても製品の幅を広げていく、これらすべてがLEANコンセプトにつながっているのである。

 

 

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